NECESSARY EVIL

生まれ変わりました。necessary evilとしての人間になりたいです。百合作品を筆頭に、アクション映画、アニメ、マンガ、ゲーム、野球など雑多に書きますね。

アクション映画、アニメ、マンガ、ラノベ、ゲーム、野球など、とにかく色々。
統一感は無くとも情熱は本物です。
デザインはテーマ流用なので深い意味はないです。。。

2DK、Gペン、目覚まし時計。 8巻 紹介[百合作品]

こんにちは、湊柚子です。

 

百合作品の感想です。


2DK、Gペン、目覚まし時計。(8巻)

[著者] 大沢やよい

[出版] 百合姫コミックス

[あらすじ] 京都で辻堂葵の結婚式を見届けた奈々美とかえで。自分たちの同居生活はといえば、奈々美は仕事をこなしつつも真意が伝わらないモヤモヤ中、かえでは何の気なしにマンガ家として着実に成長中と、一見いつも通り。しかし恋愛観の違いで恋由姫とかえでに亀裂が。初めて人の気持ちに真剣に向き合ったかえでは自分の中の“奈々美ちゃん”という存在を強く意識していく。「私はどうしたいのか」かえでが成長し「一緒に住む理由」を失いつつあるふたりが将来について結論を出すときがきた……そんな同居生活、シリーズ最終巻! (Amanzonより)

 

二人の関係の未来は、奈々美の想いだけでなく、かえでにも託された。

 

このシリーズは、恋由姫回を除いてほとんどが奈々美を中心とした話で進められ、奈々美とかえでの関係は、奈々美が思わずかえでに恋し、奈々美がそれにどう向かい、そしてどう行動するか……という形で、描かれてきました。ですから、前巻の最後でかえでが寝ている奈々美にキスした時点で、後は奈々美がかえでと付き合うかどうか決めるだけの最終巻なのかと思ってしまいます。

しかし、そんなことはありませんでした。最終巻では、かえでの視点が多く描かれています。人と人との関係である以上、奈々美だけでなく、かえでにも大きな変化が要求されるのです。

 

前巻の最後のキスは、自分でしておきながら、かえでを悩ませるものでした。思わずキスしてしまうほどのこの想いはなんなのか。そして、以前に奈々美から言われた「好き」は、恋愛としての告白だったのか。自分の心と奈々美の心がお互いに恋という次元にあるのかどうかもわかりかねて、苦しくなるのです。そして元々、恋愛は漫画の作業に支障を来すものとして避けてきたこともあり、思わず「全部なかったらよかった」と呟いてしまいます。恋由姫の前で。自らはかえでにフラれ、奈々美の想いを知って身を引き応援している恋由姫の前でそんなことを言ったかえでは、当然に恋由姫の怒りを買い、助けを失うことになります。

 

更に、かえでの戸惑いは、ハッキリとした問題として、かえでに突き付けられます。それを突き付けてきたのは、奈々美でした。

『かえでは、私の想いを気の迷いだと思い込みたいだけだ(本当は、恋愛としての告白だったと気づいてる)』

『かえでの言う「恋愛に漫画の邪魔をされたくない」は、恋愛と向き合うのを避けるための言い訳でしかない(漫画の仕事を助けてくれる恋由姫を拒んだことと矛盾している)』

これまで、かえでへの自分の想いに向き合い、沢山悩んだ奈々美だからこそ、かえでが恋愛に向き合いたくないだけなのだと、断言できてしまうのです。

 

恋由姫を怒らせた上、奈々美に「自分の気持ちからの逃避」を指摘されて心を暴かれる。心が激しく揺さぶられ、漫画の仕事にも支障が出る中、ドラマ化の決まっていた漫画の原稿を落としてしまいます。すべてにおいて、ダメになってしまいそうなかえで。

しかし、原稿を落としたことを知った恋由姫に、「大切なもののためなら、気まずいとか関係なく、自分(恋由姫)を呼べたはずだ」と言われたことで、気持ちが変わります。本当に大切な存在があるなら、向き合わなくてはいけないと。逃げてはいけないと。

 

本当に大切な存在―――奈々美と向き合うことを決めたかえで。奈々美と向き合うために、奈々美の元へ帰ると、奈々美のほうも、新たな決心をしていました。同居の期限(かえでの漫画家の夢が叶うこと)を理由に、同居をやめようと言うのです。涙を流すかえでを見た奈々美は、「またこの雰囲気にやられて惰性で同居を続きてしまう」と思います。

しかし、今のかえではこれまでのかえでではありません。ただ何となく同居を続けるのではない。気持ちに向き合うことのないまま惰性で一緒にいるのではい。奈々美のことが大切だから、ずっと一緒に居たいと思うから、同居を続ける。もう逃げない。「好きだよ、奈々美ちゃん」。

ちゃんと伝えることで、これまでの同居とは違うことを明確にし、新たに、恋人としての二人の関係がスタートしたのです。

 

 

 

という訳で、このシリーズは完結です。この先の二人の関係がどうなるかはわからないというように、わりとリアルな描写はあるものの、ハッピーエンドで終わって良かったです。ただ、この手のストーリー構成だと、恋人としてのスキンシップの場面が少ないのが残念ですね。最後のほうで、扶養家族がどうとか、誕生日の夜は寝る前にベッドで…的な話はありますが、その先はご想像にお任せ!ですからね。文面こそ丁寧に書いてるつもりですが、本当は恋人同士の他愛ないイチャイチャが大好物です(笑)

一組の同居人がカップルになる過程で8巻も描かれた大沢さんは素晴らしいです。

8巻分、いずれもネタバレだらけでしたが、実際に読むと各人また違った感想を持つこともありますし、ブログの数千字程度では伝わらないことのほうが多いので、社会人百合の代表作品とも言えるこのシリーズ、是非とも読んでください。