NECESSARY EVIL

生まれ変わりました。necessary evilとしての人間になりたいです。百合作品を筆頭に、アクション映画、アニメ、マンガ、ゲーム、野球など雑多に書きますね。

アクション映画、アニメ、マンガ、ラノベ、ゲーム、野球など、とにかく色々。
統一感は無くとも情熱は本物です。
デザインはテーマ流用なので深い意味はないです。。。

付き合ってあげてもいいかな 5巻 感想[百合作品]

こんにちは、伊吹柚子です。

 

百合作品の感想です。


付き合ってあげてもいいかな(5巻)

www.shogakukan.co.jp[著者] たみふる

[出版] 裏少年サンデーコミックス

[あらすじ] 

お願い。私を、ひとりにしないで…。
すれ違いを解消できず、
別れることになったみわと冴子。
そのショックを引きずりながらも、
みわは勇気を出して初恋の先輩に連絡をする――。

「志帆先輩、私…後輩じゃなくて、彼女になりたい…」

胸の奥底で温めてきた
積年の想いは実るのか?
心を締め付ける第5巻!(小学館より)

 

 

 

4巻を以て、第一部終結とでも言えるような結果を迎えた二人。

5巻は、第二部の幕開けです。

まあ第二部といっても、第三部への繋ぎのような役割に近いかなとも思います。

繋ぎにしては重く重要な感じですけどね。

ここでは、6巻と合わせて、第二部として捉えます。

 

 

さて。

別れた二人は、4巻から続いて、相変わらずなんとなく微妙な雰囲気も漂わせながら、別の道を歩いて行こうとします。

そんな中、冴子は、みわの次の恋、つまりは、志帆への恋心の決着を促します。

 

促す、と言っても、そんな単純な話ではないですけどね。

 

冴子にとって、志帆は、みわに愛して貰えなかった原因となった女性。

しかし、志帆への恋心に決着をつけないと、みわは次の恋に動きそうにない。

「フラれてくるなら(会って告白しても)いいよ」と言いつつも、内心では、もし二人が付き合えてしまったら、自分が好きだったみわが本気の恋愛をしている姿を直視しなくてはいけないと葛藤。

どちらが悪い、というわけでもない二人の別れですけど、まあこの状況は冴子には酷ですよね。それでも、「この先、みわ以上に好きになれる女性は現れない」と思ってしまうほど好きだった相手のことですから、先に進んで欲しいという気持ちのほうが強いんでしょうね。

個人的には、なぜ冴子が「フラれる可能性」のほうを評価しているのかは謎です。「過去の恋を成就させることの難しさ」という一般論なのか、「フラれてほしい」という期待の表れなのか。まだ8巻段階では、よくわかりません。その後、一人暮らしをはじめたみわの家にみんなで集まった時にも、「フラれるって身構えてたほうが、フラれた時にショックが減るから、フラれてくるなら(いいよ)って言っただけ」と誤魔化してましたし。

 

そんなこんなで、ついに、冴子にけしかけられたみわは、告白すべく沖縄へ、連泊で志帆に会いに行きます。

到着して早々、一緒の時を過ごしながら、「これが恋か」「冴子への想いは恋じゃなかった」などと思います。

今更ではありますけど、ようやくみわが、冴子への想いの正体を自覚した瞬間でした。別れた時も、別れた後も、別れた理由は「冴子にフラれたから」だったので、根本的な部分に気づいたのは、今回が初めてです。

 

1日目夜。志帆の家で、みわは、同性愛者であることをカミングアウト。受け入れる志帆。

2日目、日中。二人で過ごしながら、高校生の頃のみわ、そして今のみわを思い、志帆は、みわから恋心を向けられていることを確信。志帆は、好意は受け入れられるけれど、応えられるのか(付き合えるのか)と自問。

2日目夜、ついに、みわが告白。

3日目。保留にしていた告白の答えが返ってくる。覚悟しながら受け取った答えは、布石に違わぬ、「付き合えない」。

 

 

冒頭で、5巻6巻は第三部への繋ぎにすぎない第二部であると言ったのは、こういうことです。

ただ、王道ラブコメにせよ、リアルラブコメディにせよ、こういう状況での告白は、自ずと成立しないことが多いですよね。

 

それに、志帆の場合は、致し方ないと言えます。

もちろん、志帆の言うとおり、みわのことを恋人にすることそれ自体は、可能。

それでも、本人も語っているように、これまで家族のせいで散々歪められてきた自分の人生(∴3巻)からようやく解放されて、やっと手に入れた「普通だけれど、それが幸せ」な生活を、みわと(女性と)交際することによって崩されるリスクは、大きすぎます。

そんな膨大なリスクを背負ってまでみわと付き合おうとは思わない、と言ってしまえば残酷ですが、それくらい、志帆がこれまでに背負ってきた重く暗い人生というのは、もう味わいたくないものだというわけです。

ただ幸せな百合ラブコメではなく、あくまで女性同性愛が中心なリアリティラブコメにすぎない故の、非情で残酷で現実的な結果です。

特に、同性愛に対する偏見は未だ根強い現代ですから、やはり「致し方ない」のです。

 

 

強がりを見せて志帆のもとを去り、帰郷したみわは、覚悟も全く働かず、引きこもりに。

心配して訪れる冴子を冷たく突き放し、死にたいを連呼する、完全闇落ち状態。

そして、闇落ち状態のまま、甲斐甲斐しくしてくれる冴子に一転して甘え、冴子の身体を求めて、感情を潰すようになりました。

フラれて闇落ちするみわを心配する冴子も、身体を求められ、都合の良いアテにされたことで、「みわを依存させて、性欲のはけ口にして、支配しよう」というような、加害的な暗い感情でみわを受け入れます。

 

フラれて闇落ちなヒロインと、都合よく使われて同じく闇落ちる元カノ。考え得る中でも最悪の展開ですね。

 

 

改めて見ると、5巻は、4巻の交際終了同様に、これまでのフラグをちゃんと回収しているなと感じます。

二人の恋愛感情のベクトルとか、二人のセックス観とか、志帆の過去とか、そういったものが諸々しっかり影響を及ぼし合って、今巻のような展開になっているのでしょうね。

 

 

物語の展開的にも、どうしてもみわを中心に書くことが多くなってしまいますが、冴子のほうも裏でしっかりとフラグは立てていますね。

もちろん、バイトの後輩、優梨愛のことです。

この二人については、もう少し先にならないとそこまで重要な要素ではないので、さらっと流します。

普通に読んでもらってお解りの通りで、優梨愛が明らかに冴子のことを意識し始めて、影響されて冴子も、優梨愛のことを意識してしまっているという状況だけ理解していただければ十分かと思います。

 

それよりも、冴子自身も、みわに多くのことを与えていなかったことに気づいた、ということのほうが重要だと思いますね。

 

 

前述の通り、次回6巻は第二部の続きです。

みわと冴子、冴子と優梨愛、闇落ちたみわの次なる舞台etc.、第三部に繋がるワクワクな内容ですから、ぜひ読んで欲しいです。

注目ポイントは、なにげに人気な新キャラの登場です。

 

 

 

 

時系列です。

 

・冴子のバイトの後輩こと優梨愛に彼女ができる(優梨愛はノンケ)。

・冴子、みわに次なる恋への一歩を促すも、みわは「別れる原因となった人だから」と遠慮。冴子は、「フラれてくるならいいよ」と再度促す。

・冴子、今後、みわ以上に好きな人は現れないと思う。

・みわが、志帆のもとへ遊びに行く(告白しに行く)約束をする。

・みわ、一人暮らしをはじめる。

・みわ、沖縄の志帆のもとへ訪問。

・沖縄1日目。志帆と過ごす中で、「冴子への想いは恋じゃなかった」と自覚。夜、みわが同性愛者であることをカミングアウト。

・沖縄2日目。志帆、みわが自分に恋心を向けていることを確信。夜、みわが志帆に告白。

・沖縄3日目(最終日)。志帆が告白を断る。

・沖縄から帰ったみわは、引きこもる。死にたいと嘆くほどの闇落ち。心配して尋ねてきた冴子を突き放す。

・冴子のバイトの後輩優梨愛が彼女をフったことが明らかに。その流れで、優梨愛は、冴子のことが気になり始める。

・冴子のことを突き放していたみわだったが、自分に甲斐甲斐しくしてくれる冴子に一転して依存するようになり、身体を求める。一方の冴子も、自分を愛してくれなかったみわから都合良く使われていることに暗い感情を抱き、依存するみわを支配しようと考える。

・優梨愛とのやりとりで、冴子自身も、みわに多くを与えていなかったことに気づく。

 

 

 

 

以上。

 

 

 

 

伊吹 柚子(Ibuki Yuzu) ようやく1番好きなキャラを語れる6巻が楽しみ