NECESSARY EVIL

生まれ変わりました。necessary evilとしての人間になりたいです。百合作品を筆頭に、アクション映画、アニメ、マンガ、ゲーム、野球など雑多に書きますね。

アクション映画、アニメ、マンガ、ラノベ、ゲーム、野球など、とにかく色々。
統一感は無くとも情熱は本物です。
デザインはテーマ流用なので深い意味はないです。。。

リコリス・リコイル Ordinary days 感想

こんにちは、伊吹柚子です。

 

ノベルの感想です。


リコリス・リコイル Ordinary days

dengekibunko.jp

[著者] アサウラ [原案・監修]Spider Lily

[イラスト]いみぎむる

[出版] 電撃文庫

[あらすじ]

「喫茶リコリコへ、ようこそ!」
 あの破壊された旧電波塔をのぞむ東京の東側にあるオシャレでおいしいカフェ――それが、喫茶リコリコである。
 本作はオリジナルテレビアニメーションリコリス・リコイル』では描かれる事がなかった錦木千束や井ノ上たきななど、看板娘たちが織り成すありふれた非日常のちょっとした物語。
 おいしい甘味に、ガンアクションに、ゲームに、人情ドラマ、ゾンビと怪獣にロードムービー……そしてほのかに愛!? もちろんコーヒーに人助けだって!!
「どんなご注文も……おまかせあれ♪」
 そんな日々を積み重ねていくことで彼女たち絆が生まれていく――オマケ付きお菓子のバラエティパックのような何でもありの詰め合わせを原案者自らがスピンオフ小説化!(電撃文庫より)

 

 

リコリス・リコイルといえば、言わずと知れた大人気アニメです。

原作はアサウラ先生。例え著書を読んでいなくとも、ラノベ好きなら自然と名前を知っているレベルのお方で、芸人ラジオ好きなら『爆笑問題カーボーイ』リスナーとしても有名なお方。

イラストレーターはいみぎむる先生。この方も、『この美』などで有名なお方。

 

私は最初、百合要素のある作品として観始めましたけど、実際はさほどって感じですね。百合として二次創作や妄想を広げる方は多いですけど、制作陣(特に声優さん)があまりその方向の解釈を好んでいなさそう…って感じがします(ミカと吉松氏の関係は許容されてるのになぜ...!)。

まあその辺は個人の解釈に任せることにして。

 

今回のノベルは「日常的な非日常」を描いたスピンオフ。

内容的には完全に視聴済みの人向けって感じです。というのも、主要キャラや作品の背景が何も詳細に記述されてないので。

また、多少ネタバレになりますが、アニメ本編の敵は一切出てこず、完全に喫茶リコリコとその関わりの中での物語になります。あと、アニメ本編の前半のほうの話かと思われるので、たきなさんがまだ狂犬です(意味がわかる方は、リコラジリスナーですね)。

 

以下、内容に移ります。本格的なネタバレを伴いますのでご注意ください。

 

 

 

構成としては、1話~5話に、各話イントロダクションがついて、全話の後にアウトロダクションがつくという構成。

明確な時系列はないですが、1話が時系列の全体を覆っていて、2話から5話が間に入っているという感じでしたね。その2話~5話は重複部分があって明確には区切れませんが、物語の核心をもとに並べると、

1話前半~2話~4話~4話終わり・5話の序章~5話~1話後半

となり、3話が1話後半までのどこかしらに相当する感じでした。

 

そして、各話の概要ですが、

1話:たきなが新しく常連となった50代早期リタイアサラリーマンに恋をした!?

2話:ちさたき(千束&たきな)のガンアクション

3話:たきなのまかない飯問題

4話:世界のゾンビ化、ちさたきのゾンビ討伐旅(2話の仕事終わりの夢オチ)

5話:常連客の女子中学生・カナを巡る物語(実質メイン?)

という感じですね。

そもそもリコリスであるという時点で「日常ってなんだ」って感じですが、公式の「日常の非日常」という表現を踏まえると、まさしく2話・4話がそれに当てはまると思います。

読者によっては、5話こそが「日常の非日常」だと捉える方もいるとは思いますが、私は、5話は「わりと、非日常のような日常」だと思います。現実を憂う、悪い意味でも。

 

その5話ですが。

なかなかに重かったですね。

 

事の発端は、アニメでもおなじみの常連客の漫画家・伊藤が発した疑問――「常連客の女子中学生であるカナの様子がおかしい」、具体的には「中学生なのに、交通費も飲食費も毎度数千円単位になる、遠方への喫茶店に頻繁に来れるのはなぜ?」というもの。

これだけなら、1話~4話の流れからしても、面白可笑しい感じになるのかと思いきや、全然そんなことなかったです。話が進んでいくことに明らかになっていくカナの生活が、酷いものでした。

父親が浮気相手と再婚したために母親は蒸発、カナ自身は継母とは一線を引きつつも不仲という家庭。学校では権力者の(孫)娘・溝隠とその取り巻きに性的な嫌がらせをされ、担任・石原は自己満足で有り難迷惑なお節介を焼かれて迷惑しているという有様。そんな苦境を唯一忘れられる瞬間が、「カナ」という偽名を使って訪れる喫茶リコリコでのみんなとのひとときだったわけです。

正直、これだけでもアニメ本編より重い内容だなって感じです。ただ、現実、こういうのってあるんですよねぇ...。非日常という感じはないです。

 

しかもこれだけでは終わらず、溝隠はカナの裸の写真を脅しに使って、彼氏の買春&薬物グループにカナを売り込もうとしたり、石原が実は性犯罪教師だと知っていて、カナを襲わせるように仕向けたり。

ここまで来ると悪い意味で非日常感出てきますけど、実際のところ、これが日常の地域はありますからね。日本にも。

そんな中でも、非日常と言えるのは、カナが『溝隠と取り巻き2人、父親と継母の計5人を銃殺する計画』を立てて拳銃を持ち歩いているということでしたね。

 

このノベルは、時系列を巧く分断しつつ、相互に要素を絡めています。

そもそも、なぜカナが拳銃など持っているのか?

それは、2話の終わりに標的を追いかけていたちさたきを偶然見かけたカナが、2人を追いかけて電車に乗った結果、標的が座席に隠しておいた拳銃を偶然見つけてしまい、拾ったからでした。

本物の拳銃かどうか確かめるために人のいないところで木に1発ぶっ放して、天の助けを得たと言わんばかりに「やったぁ...」と呟くカナの姿は、カナの苦しみを如実に現してます。

 

それからの結末に至る経過は、いくらネタバレといえど、実際に読んで欲しいので詳細には書きません(見所は、カナと石原の対峙と、千束がカナをどのように救うかです)。

結果としては、担任の石原にはミズキからの私刑が下り、カナの裸の写真がクルミによってネットの海から消し去られたことによって、とりあえずの解決を得ました。

こうやって解決まで持って行けるのは、我々にとっては非日常ですけど、リコリコにとっては日常と大差ないんでしょうね。

 

単純な感想としては、「暗い」「重い」「拳銃」「少女の悲劇」なので、「ブラック・ラグーン日本版か?」って感じでした。制作陣はガンスリンガー・ガールみたいな作品を作ろうというところからスタートしてるので、あながち間違いじゃないと思うんですが、どうでしょう(私はガンスリンガー・ガール観たことないです)。

 

あとは、疑問点が2つ。

まず単純な疑問としては、「カナはなぜ溝隠から裸の写真を見せられて驚いたのか」ですね。

最初読んだ時は、写真を撮られたことに驚いたのかと思いましたが、そもそも直接撮られているのだから知らないはずはないですし、さらに、拳銃を手に入れる直前に「写真を撮られたり」と嘆いており、写真を見せられた時には既に拳銃を持っていますから、時系列的には当然写真を撮られたことは知っているはずです。何に驚いたんでしょうか?

また、疑問とはちょっと違うかもしれませんが、カナの処遇がどうなったのか気になります。

クルミ・ミカ・ミズキの会話によれば、「児相・警察に通報して終わりでは千束が満足しない」とのことですので、カナには児相・警察とは違った対応がなされるはずですよね。児相の場合だと、一時保護の後にカナを現在の父親・継母のいる家に戻す可能性はありますが、それだと児相とは違った対応にはなりません。実母のところに送るのも同様です。何より、いずれにしても、カナは父親・継母を殺したいほど憎み、実母には捨てられているから愛情に期待できないという状況なので、千束的にあり得ません。

その他だと、施設や里親がありますけど、必然的に住居が変わる上に金銭や時間の制限が大きくなって、これだとリコリコに通えなくなりますので、児相と違う対応という観点からも、カナの幸せという観点からもナシです。

さてそうなると、他に手段があるのか...ということで、カナの処遇が疑問です。

一番現実的なのは、リコリコの常連に養子縁組できる人がいて、その人の子になるのが一番でしょうね。現実的、といっても、超法規的組織であるDAの力を借りないといけませんが。

引き取り手の問題とは別に、今回敵対した人間たちからの報復対策もどうなったのか知りたいところですね。千束が絡んでいる以上、みんな生きているわけですが、かといってカナを半永久的に保護するのも難しいでしょう。親が権力を持っているだけの溝隠はともかく、反社組織や、社会的に死んでいて失うもののない元担任・石原は、何をしでかすかわかりません。

 

 

 

 

ということで、感想でした。

恐らくリコリス・リコイルの設定は結構細部まで作り込んでいるはずなので、あえて下手な考察はせず、感想と疑問を織り交ぜての紹介をするに留めました。

スピンオフにしては読み応えのある作品でしたが、もうちょっと考察の余地を狭めて、すっきりできる詳細な描写が欲しかったなとも思います。読解力のないわたしの問題でしょうかね。。。

 

 

※追記

メロンブックスの特典ブックカバーにある書き下ろしSSでは、エリカが芸能スカウトに目を付けられていましたね。文字通りの内容で、特に何の変哲もない話ではありますが、エリカにスポットが当てられているのは良きだと思います。「エリカ要素がもっと欲しかったなぁ」という方は、エリカ役の八神結香さんがゲストとして参加したリコラジ第19回をお聴きください。

youtu.be

 

 

 

 

以上

 

 

伊吹 柚子(Ibuki Yuzu) 狂犬たきなさんも、千束に絆された少女たきなさんも好き