NECESSARY EVIL

生まれ変わりました。necessary evilとしての人間になりたいです。百合作品を筆頭に、アクション映画、アニメ、マンガ、ゲーム、野球など雑多に書きますね。

アクション映画、アニメ、マンガ、ラノベ、ゲーム、野球など、とにかく色々。
統一感は無くとも情熱は本物です。
デザインはテーマ流用なので深い意味はないです。。。

私の推しは悪役令嬢。 5巻 感想[百合作品]

こんにちは、伊吹柚子です。

 

百合作品の感想です。


私の推しは悪役令嬢。(5巻)

[著者] いのり。(原作)、青乃下(漫画)、花ヶ田(キャラクターデザイン原案)

[出版] 百合姫コミックス

[あらすじ] 

平民運動への関与からレーネが追放されて以降、
ふさぎ込みがちなクレアと、どうにか元気づけたいレイ。
そんなある日、クレアが「お姉様」と呼び慕う
隣国の王女・マナリア=スースが王立学院に転校してくる。
最大のライバルの出現に、レイがとった行動とは…。

推し一筋のラブコメ・ファンタジー、第5巻!(Amazonより)

 

 

感想へ入る前に。

アニメ化おめでとうございます!

wataoshi-anime.com

制作会社もクレア役声優さんも目立った実績があるわけではないですし、本作自体が百合界隈で特別有名な作品というわけでもないですが、作品自体は文句無しに良い作品ですから、ぜひ皆さんにも観て欲しいですね。

漫画しか読んでないよ~原作は完結までおあずけ~という私が薦めるのも変な話かもですが...

 

さて。

1~3巻の感想の時点では申し訳程度の設定だと思っていた魔法設定がしっかり活かされ、なかなかストーリー重視だった4巻でしたが、今巻は魔法設定も引き続き活かされつつ、百合要素厚めなストーリー展開となります。

というのも、隣国の第一王女にして『クレアの初恋の人』、マナリア(マナリア=スース)が留学と称して学園にやってくるからです。

 

マナリアはビジュアルだけだと男か女かよくわかんない少女ですけど、その見た目通り、クールで同性を惚れさせるタイプの美人ですね。加えて、茶目っ気や怖さもある感じの。......誰かに例えようとしたのですが、短編はともかく、ヒット作には意外といないタイプかもしれません。

 

このゲーム世界の主人公プレイヤーとしての現世から転生してきたレイは、当然、マナリアが『クレアの初恋の人』であることを知っており、浮かれるクレアを見て早々にヤキモチを焼き始めます。

レイは、男に負けるならともかく同性に負けるわけにはいかないというスタンスのようですね。ちょっと不思議なようですが、『クレアがノンケで、クレアの幸せが一番』という理屈には適っています。

ちなみに、クレアが母親を事故で亡くしたときにクレアの心を救ったのがマナリアで、当時はマナリアを男だと思って惚れたとのこと。しかし女と判明してなお惚れ込んでいる辺り、ノンケで同性愛を否定しつつも、結構いけるクチですよねクレア様(歓喜)。

 

こうしてやってきたマナリアは、「後継者争いから落ちて事実上の国外追放にあった」という爆弾発言をしつつも、見た目に違わず、あっさりと何人もの女の子を落としていきます。

同様に、魔法がとてつもなく強い(レイよりも)とか、レイも落としにかかるとか、まあ見事にこの手の美少女のステレオタイプ的な行動をしたり、属性を持っているわけですね。

ステレオタイプというと悪い印象を与えるかもしれませんが、ストーリー的に面白くなるからそのようなステレオタイプが存在するとも言えます。それに、ステレオタイプのわりには有名作品にあまり出てこないですし、この作品においても、初めての同性ライバルですからね。ありがたい存在です。

 

そんなこんなでマナリアは散々クレアにちょっかい出してはレイをやきもきさせ、ついにはレイの『自分が結ばれなくてもクレアさえ幸せならそれでいい』というスタンスまで真っ向から否定。

 

そして、ここからの流れはある程度読める展開かもしれませんが、読んでいて非常に面白いものでした。

 

ムキになったレイは、マナリアの実力を知っていながら戦いを挑まれ、魔法勝負で見事完敗。そして、心配して声をかけてきたクレアに対し、マナリアへの劣等感と嫉妬心を遺憾なくぶつけ、ついにはメイドを辞すことに。

メイドを辞したレイは廃人も同然。クレアも、母親、メイドのレーネに続いて、レイまで去ってしまったことによって泣きはらす日々(元は憎き平民のレイが、母親やレーネと同列に並んでいるところがポイントですよねぇ)。

 

そんな状況を見かねたのは意外にもマナリア。結末は当然後述するのですが、その結末からしても、ここはマナリアが本心からレイにぶつかってきた場面なんだろうなと思います。

マナリアは、クレアを諦めたレイを糾弾し、諦められるわけがないと主張。なぜそうして糾弾し、そうして主張できるのか。自分語りを始めます。

何を隠そう、自分(マナリア)も同性愛者であると。

従者に長らく片想いしていたが、ある時その想いに蓋をし切れず、彼女を慰み者(時代設定を考えれば、いわば『性奴隷』)にし、彼女が去った後はショックで娼館に入り浸り、ついにはそれがバレて国外追放にあったと。

たくさんの女の子を落とすクール美女にありがちな、「本当の想い人は1人だけ、そしてもうこの場にはいない」パターンですね。そうじゃないと、ただの軽薄なキャラになってしまって魅力がなくなってしまいますから、こういう背景があることで、マナリアは存在する意味があると思います。

 

苦しい過去を語ったマナリアですが、結論どういうことなのかとレイに問われると、まさかの「次はクレアを慰み者に」しようと言い出します。

失意と劣等感と嫉妬心で廃人と化していたレイも、もはやクレアをマナリアに託す選択はないと悟り、再度勝負を提案。すでに決着はついているというマナリアに対し、『アモルの祭式』での勝負をもちかけました。供物を天秤にかけ、その(想いの)重さによって決着をつけるという権威ある勝負です。マナリアは、自分が勝ったらクレアだけでなくレイも慰み者にもらうという条件で引き受けます。

 

そして当日。レイが現れる前にマナリアは早々に供物を提示。マナリアが持ってきた供物は、最も重いと言われている『フロースの花』という供物。もはや誰もが勝ちを疑わず、クレアさえマナリアが本気だと考えてマナリアの勝利宣言のキスを受け取ろうとする...

 

レイ「ちょーっと待った!」

 

そんな『逆』激アツな状況で登場したレイ。誰もがマナリアの勝利を疑わない中でレイが天秤にかけた供物は、木の枝。この時点では未知の、『フロースの花』よりも重い極レアアイテム。

 

よほど重要な場面以外では、特に恋愛絡みでは転生前のゲーム知識を積極的には活用してこなかったレイ。それでも今回は未知のアイテムを使って勝ちに行くくらい、何が何でも勝たなくてはならない勝負であったと考えていましたということです。

レイにとっては、「クレアが幸せならそれでいい」ではなく、「自分がクレアを愛して幸せにする」というスタンスへの転換点になったわけですね。

 

しかしこれでは終わらなかった。

敗北したマナリアは、「レイこそが本命だった」と高らかに白状します。レイの反応が良くてクレアにちょっかいを出していたと。つまりは、勝負のおまけのように言っていたレイの慰み者化こそが本命だったということですよね。未知のアイテムで負けた時には本気で驚いてましたから。ただ、「伴侶として相応しい」と言っているくらいなので、『慰み者』というのは方便でしょうね。

マナリアは白状のままにレイにキスしようとしますが、これをクレアが阻止。

 

クレア「レイはわたくしのものよ!」「わたくしのものをとらないで!」

※見物人たちの前で絶叫

※所有物宣言

※「平民」→「レイ」への一気昇格

 

 

マナリアは降参し、第一王子が暗殺されて後継者争いが振り出しに戻った母国へ呼び戻されていきましたとさ。

一応、その暗殺がレーネの件と関わりがあったりするんですが、今回は百合漫画としての感想ということで、その辺はご容赦をば。

 

 

ということで、総論。

マナリアというクール&タチ系の同性愛者の登場によって、レイはクレアと結ばれる道を志し、クレアの中でレイが『平民の従者』から『レイ』に昇格することになりました。クレアも、マナリアに惹かれて口づけをしそうになる辺り、『ただのストレート』から『好きになった人が女性だったストレート』になる期待を持てます。

特にわたしが好きだったのは、レイが自棄になってメイドをやめるところですね。当初のレイだったらそんなのも大したダメージじゃなかったのでしょうけど、良くも悪くもマナリアによってクレアへの想いを焚きつけられたことで変わりましたね。やっぱライバルがいないと恋も進展がないということでしょうか。

また、レイとクレアで盛り上がるのも良いですが、まだちょっとマナリアにも謎は残りますね。

マナリアはレイの反応が楽しくてクレアにちょっかいを出していたと言ってはいますが、それにしては暗い過去を話して発破をかけるのはちょっと不自然だなと思いますね。発破をかけるだけならともかく、暗い過去の話をする必要があるのかと。なので、マナリアは明るく自然に「レイが本命、レイが可愛いからからかった」なんて言ってますが、結構マジにレイに惚れた部分もありそうです。少なくとも、過去に1人の従者を本気で愛したことはありますからね。

加えて、マナリアがクレアにちょっかいを出そうと思ったのは、ロッドが「レイはクレアにぞっこん」と言ったからで、もしそれがなかったらどうなってたのかは気になりますね。普通に落としに行ってたんですかね。

あと、マナリアの本命がレイだったというオチ、冒頭で『ゲーム内ではマナリアは主人公の味方』という説明があるので、これである程度想定はできたかもしれませんね(百合脳の我々なら)。

 

 

さて次巻はバカンスとのことで。めっちゃ気になりますけど、あえて原作は読まずに漫画版を待ちます。

 

 

以上

 

 

伊吹 柚子(Ibuki Yuzu) 本作のWikipedia英語版(I'm in Love with the Villainess)も必読