NECESSARY EVIL

生まれ変わりました。necessary evilとしての人間になりたいです。百合作品を筆頭に、アクション映画、アニメ、マンガ、ゲーム、野球など雑多に書きますね。

アクション映画、アニメ、マンガ、ラノベ、ゲーム、野球など、とにかく色々。
統一感は無くとも情熱は本物です。
デザインはテーマ流用なので深い意味はないです。。。

付き合ってあげてもいいかな 4巻 感想[百合作品]

こんにちは、伊吹柚子です。

 

百合作品の感想です。


付き合ってあげてもいいかな(4巻)

www.shogakukan.co.jp[著者] たみふる

[出版] 裏少年サンデーコミックス

[あらすじ] 

私たち、付き合っていけるよね…?
初恋の先輩との再会で心が揺れるみわ。
その想いを隠しきれないみわの様子に、
冴子は苛立ちを募らせていく…。

「…あたし、みわに一度も好きって言われたことない。」

付き合ってるからって、
幸せで満たされてるなんて限らない。
リアルラブストーリー第4巻!(小学館より)

 

 

 

見事、フラグ回収です!!!(悪い意味で)

 

 

さて、その結果ですが。

これまでの感想記事(1巻2巻3巻)をご覧になった方、あるいは、この「付き合ってあげてもいいかな」が単なる百合作品ではなくリアルラブコメディであることの強調を意識されていた方であればお解りでしょう。

 

ズバリ、みわと冴子の交際終了でございます。

 

 

今読み返しても、私の書いていた感想記事は、二人が別れることを知っている人ならではの感想記事でしたよねぇ...。

 

これまでの感想記事に書き記した点や改めて思ったことなどを踏まえつつ、今巻はいつにもまして、展開に沿って詳細に見ていこうと思います。

 

 

はじめに、前回の続きですね。

初恋の相手、志帆にオールで二人きりの時間を提案されたみわでしたが、誘いは断り、連絡先交換をしてお別れ。その足で冴子に会いに行く、という展開です。

 

この場面はズバリ、崩壊の序章です。正確には、二人のパーソナリティ的に崩壊する未来は何となく見えていたので、崩壊の序章は1巻から既に始まっていたわけですが。なので、正確に言えば、二人の関係をダムに例ると、今回は、決壊に直結するヒビが入ったとでも言えましょう。

と言うのも、志帆からの誘いを断った理由にしても、志帆との連絡先交換でのやり取りにしても、明らかに、志帆への恋心が再燃しているからです。

これから更に展開を追って見ていきますが、この「志帆への恋心」が二人の関係を崩壊させる致命的なヒビになったことは間違いありません。

ただ注意すべき点は、この時点では、みわは自分の再燃した恋心を認めようとはしていないという所です。まだ再燃していないと思い込んでいる。だからこそ、再燃する前に冴子に会って、再燃しそうな自分を悟られないようにしながら、なんとか冴子との関係を維持しようと考えたわけです。

 

この場面でもう一つ重要なところは、みわがなぜ志帆への恋心の再燃を恐れていて、冴子を優先しようとするのか、というところ。

「当然でしょ」と思われるように、一般的にはもちろん、「彼女がいるので、浮気を誤解されるわけにはいかないから」です。

みわ本人もそんな感じのつもりです。でも、これでは正解にはなりません。

正解は、「自分なんかを彼女にしてくれている人(冴子)に不義理をしてはいけないから、浮気をしてはいけない」です。

もっと詳細に言うと、みわの深層心理は、「冴子は、自分を彼女にしてくれた恩人(もっとドライに考えれば、「交際可能な貴重な人材」)だから裏切ることはできないし、失ったらまたひとりぼっちになってしまう。でも、本当に好きなのは志帆だから、ここで志帆と一晩過ごしたら、志帆への恋心からは目を反らせなくなって、本当の浮気になってしまい、冴子を裏切ることになり、冴子にも嘘をつけなくなる。それなら、今のうちに志帆への恋心は無意識のうちに蓋をして、恋をしていないフリをして、冴子をつなぎ止めておこう。」という感じです。冗長な感じがしますけど、恐らく、心の奥底、本能的な感覚は、これに近いと思いますね。

これが、「志帆への恋心の再燃」が二人の関係を崩壊させる致命的なヒビになった原因です。

もしこれが、「志帆のことは好きだけど、冴子のことを本気で愛しているから、やっぱり冴子と添い遂げていきたい」という単純なものだったら、「志帆への恋心の再燃」くらいでは崩壊することもなかったでしょうねぇ。

 

これまでの1~3巻の感想記事では直接的に触れてこなかったのに、ここでさらっと書いてしまいましたが、この先、二人が別れる場面でも重要になってくるので改めて強調します。

つまり、以上のことからもわかるように、みわと冴子はお互い、特段「好き」という感情を高ぶらせて付き合ったわけではない(cf.1巻感想記事のリアリティポイント①)が、みわに関して言えば、相変わらずその域を抜けておらず、交際を続ける理由がそのままなのです。

 

 

もはや結論の多くを語ってしまいましたが、まだ冒頭です。。。

すみません、次。

 

 

みわとしては自分も冴子も上手く誤魔化した感じで、冴子は上手く誤魔化されたような感じで、二人は夏休みの終わりを迎えます。二人が部室に行くと、同級生と先輩のノンケ二人がカップルになっていましたね。

まあそれ自体はいつもなら流すところですが、今回ばかりは違います。

冴子は、この二人の恋愛に巻き込まれ(女のほうの先輩が、冴子と自分の彼氏が浮気しているのではないかと疑う)、「浮気相手ではないことの証明」の難しさを通して、「みわが志帆に想いを再燃させていないことの証明」ができないことに苦しみます。

 

そしてその後、みわと冴子は、以前に約束した通り、海に遊びに行きます。

さて、ここの場面も冒頭同様、たかだか数ページの場面なわけですが、二人の関係に入ったヒビを大きくするには十分な場面でした。

冴子が「来年まで自分たちは付き合っているだろうか」というようなことを言っているので、なんとなく読んでいてもお解りになるとは思いますけど、それより重要なのはその後。

それは、みわの答え。

 

「別れないよ絶対」

「私が手放したくないから」

「こんな私の彼女でいてくれるの、冴子だけ」

 

それこそ少女漫画とかであれば及第点な回答なのでしょう。

しかし、冴子が求めているのはそんなことではないわけです。

この答えが、みわの深層心理の現れであるとわかっていれば、尚更。

 

この答えを聞いた後、冴子はみわと距離を置きます。

自分の気持ちと、みわの気持ちをうやむやにして、当初の「なんとなく幸せな交際」を実現させるために、と自分に言い聞かせて。

しかし、みわはそんな冴子の思いなど知る由もなく、みわは避けられていることに対する不満を漏らします。

 

冴子「白々しいんだよ。自分は他の女に目移りしといて。」

  「あたしが気づいてないとでも思った?」

 

そんなみわに思わず、本音をぶつけてしまった冴子。

自分で蓋をしたつもり、見ない振りをしたつもりの「志帆への恋心の再燃」を、冴子にハッキリと明らかにされてしまいました。

 

 

それでもいつものように、なんとなーく仲直りの機会を得ます。

とりあえず本当のことを言い合ってしまおうと。

みわは、「志帆への恋心が再燃しかけた」と。

冴子は、「みわに好きって言われたこと無い」と。

お互い、本音をぶつけ合って。

いつものように、仲直り。

 

 

 

 

そんなわけはない。

 

 

散々撒かれた、すれ違いの種。関係のヒビ。崩壊の流れ。

突如その時は訪れました。

 

 

仲直りしたね、じゃあ、いつもみたにヤろっか?

仲直りのセックス、良かったね。

 

冴子「たぶんさあ。あたしが耐えればいいんだよなあ......」

 

冴子「別にあたしじゃなくたっていいんでしょ?」

 

冴子「もういいよ、無理しなくて」

  「自分に言い聞かせてるんでしょ?」

  「幸せだって思い込まないとやってられないんでしょ?」

  「別れよ。...別れてくんない?」

 

冴子「恋愛の好きじゃないでしょ」

 

 

まさしく、ダムの決壊です。

条件は揃っていたけど、その決壊の時はわからない。

これまでも私は再三にわたってこの作品のリアリティポイントを挙げてきましたが、これは、リアリティポイント④になりますでしょう。

なんとなく自分の中で落としどころをつけたつもりでも、積もり積もったものがあるので、ふとした拍子に、一転して決壊してしまう感情。

こういうの、ありますよね。

冴子も、恐らくはそんなリアルな感情の変化を起こしたのだと思いますね。

 

冴子の言葉の一つ一つが、これまでの二人の関係が終わるきっかけを物語っていますよね。

これまでと今回の感想記事、1~4巻の内容、そして、みわが志帆に恋心を再燃させたと判明した後の完(部活の先輩)と冴子のやりとりを踏まえれば、はっきりとわかるでしょう。

 

つまり、

1に、みわと冴子はお互い、特段「好き」という感情を高ぶらせて付き合ったわけではないが、みわは交際を続ける理由が「いい人が、自分と付き合ってくれたから」であるのに対し、冴子は、みわのことを確実に好きになっている

2に、冴子がみわを好きな気持ちは、盲目的なそれではないが、これまでにない感情や感覚を引き起こさせるほどのものであって、間違いなく恋愛感情である

3に、想いのすれ違いや相性のすれ違いがある中でも、お互いの利害で成立させていた

4に、そんな中、みわが志帆に恋心を再燃させてしまった状況は、愛されていない上に、みわに別の想い人ができてしまった冴子にとっては、到底耐えうるものではなかった

こういうことでしょう。

 

ただ、単純な回答としては、別れた後にバイトの後輩に漏らした冴子の本音で十分でしょう。

 

冴子「...ちくしょう。愛されたかっ...」

 

 

さてその後。

ちゃんと別れ、よりを戻す感じもなし。

お互い、気にしつつも、新しい人を探すんだろうなぁ、という感じです。

 

冴子の場合は、バイトの後輩、優梨愛の姿がちらつきます。

みわの場合は、志帆ですね(いろんな意味で)。

 

 

 

改めて、この作品は、百合作品ではありません。

リアルラブコメディです。

作者のもとに届いた多くの意見と同様、私も「みわと冴子が別れてこれ以上何を見るの???」と当時は思ったわけですが、この先も百合は続くわけですから、そこを楽しみに読むべきですよ。

ちなみに、8巻時点でよりは戻しておりません。

そういう意味でも、みわと冴子のカップリングガチ勢の皆様にも、まだ期待はあると思いますよ?

 

あとは、まだこれまでの感想記事で触れた点がすべてフラグ回収されたわけではないので、そういった意味でも、ぜひ続きを読んで欲しいなと思います。

 

 

 

それでは恒例、時系列を書いておきます。

 

・志帆の誘いを断る。連絡先は交換。みわは社交辞令ではないかと疑ったが、志帆は連絡を取り続けると伝える。

・志帆と別れたその足で冴子に会いに行く。志帆への恋心が再燃しそうになったことは伏せ、異性愛者のフリをして疲れたと誤魔化す。

・冴子、部活のメンバー同士の恋愛に巻き込まれ、浮気相手ではないかと疑われる。

・みわと冴子で海に行く。冴子は来年も付き合っている保証はないと言うが、みわは否定する。

・みわが志帆への恋心の再燃を隠していることに耐えきれず、冴子がキレる。

・本音を話し合って(実際はみわだけが本音)なんとなく仲直りしたが、ピロートークでついに冴子が限界を迎え、別れを切り出す。

・冴子はバイト先の後輩優梨愛との関係を深め、一方、みわは、冴子と向き合ってこなかった自分に気づく。

・二人は、とくに周囲に伝わるギクシャクはなく、友人としての日常を送る。どうやら、ノンケの優梨愛に、彼女ができたようだ。

 

 

 

 

以上。

 

 

 

伊吹 柚子(Ibuki Yuzu) まさかのこの記事の執筆に4時間もかかってしまったアホ